【雇用】円安で外国人材流出も 愛知の院生「独は200万円高い」
日本政府から奨学金も受けているが、物価が上がっても増えない。ドイツからのオファーは年に1カ月の有給休暇もあり魅力が多い。
愛知県内の外国人労働者は2021年10月時点で17万7千人と、都道府県別にみると全国で2番目に多い。記録的な円安水準が続き、日本での賃金に悩む人が増えている。ドルや自国通貨に対して円の価値が下がり大きく目減りしているためだ。帰国や他の国へ流出につながりかねない。
県内では16年ごろから年間2万人のペースで増えていたが、19年以降は新型コロナウイルスの影響で新規の労働者が入国しづらく伸び悩んでいた。国籍別にみるとベトナムが24%と最も多く、ブラジル(23%)、フィリピン(15%)、中国(15%)と続く。仕事先は製造業が42%と最も多い。
アジアを中心とした外国人材の紹介会社OHAYO(オハヨー、愛知県一宮市)の最高経営責任者、ベトナム出身のチャン・ゴック・ティンさんによると「日本に来てまだ日が浅く慣れていない技能実習生には、円安で思うように稼げず母国に帰りたいという人が多い」という。
円はベトナムの通貨ドンに対して約2年で25%下落した。チャンさんによると、最低賃金で働く技能実習生の場合、手取りの給与から家賃や食費を除くと手元に残るのは4万~6万円ほど。ここから母国に送金したり借金返済に充てたりしていたが、通貨の価値が下がりストレスの多い寮生活や自由が限られる仕事に疑問を持つ人が増えている。
日本人と同等の賃金で単純労働者を受け入れる在留資格「特定技能」を持っていても帰国する人がいる。チャンさんの会社では6月以降、10人ほどが帰国した。特定技能者は日本での滞在歴も長い。新型コロナウイルスの厳しい水際対策が長引いたところに、円安が背中を押した。
アジアでは給与水準が上がりつつある。
日本貿易振興機構によるとベトナムの22年7~9月の平均月収は約670万ドン(約4万1500円)。1年前と比べ29%上がった。外国人材の紹介や生活サポート事業を手掛けるスタートアップのKUROFUNE(クロフネ、名古屋市)は「日本語ができる人材は、日系企業の工場リーダーなど母国で引く手あまた」と指摘する。
愛知県では10月から最低賃金が31円あがり、986円となった。名古屋商工会議所の嶋尾正会頭は11月1日の記者会見で「エネルギーの高騰があらゆる業種に影響している。中小企業が(商品に)価格転嫁できる状況を早くつくらないといけない」と指摘した。
外国人労働者にとって日本で働く魅力が薄まれば、中部の人手不足にいっそう拍車がかかる。賃金引き上げだけでなく、受け入れの体制を整えるソフト面でのアプローチもより大切になりそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD26BLC0W2A021C2000000/