【金融政策】与党圧勝でも日銀緩和に影響なし、年内修正観測は後退-サーベイ
→コアCPI見通し2%台に引き上げ・成長率は下方修正見込む
与党が大勝した参院選の結果は日本銀行の金融政策運営にほとんど影響を与えず、これまで通り金融緩和を継続すると8割のエコノミストがみている。円安進行や物価上昇圧力に対応して年内に政策修正に動くとの見方も足元で後退している。
エコノミスト47人を対象に8-13日に実施した調査によると、参院選を受けて「金融引き締めに転じる可能性が高くなる」との回答が11%で、「追加緩和に踏み切る可能性が高くなる」はゼロだった。20、21日に開かれる金融政策決定会合では全員が現行緩和策の維持を予想した。
円安進行や物価高に対応して年内に何らかの措置を強いられる可能性は「非常に高い」「高い」が計19%と前回の6月調査の26%から減少。「低い」「非常に低い」は計70%に増えた。2023年4月の黒田東彦総裁の任期満了までに金融引き締めを行うとの見方は14%と6月調査の22%から減少した。
調査リポート:日銀7月会合でエコノミスト全員が現状維持を予測
可能性は高いとの見方が後退
円安や物価高対応での日銀の年内政策修正
(エコノミストによるアンケートの偏差棒グラフはコピペできない形式ですので元ソースから御覧ください)
出所:ブルームバーグ
10日投開票の参院選では、自民党が単独で改選議席の過半数を獲得するなど与党が大勝した。8日には大胆な金融政策を掲げてアベノミクスを推進した安倍晋三元首相が遊説中に〇撃を受けて死亡し、市場では岸田文雄政権下の今後の金融政策運営や黒田総裁の後任人事への思惑も一部で浮上している。
□日銀の金融緩和は維持へ、参院選大勝で岸田首相に「黄金の3年」 – Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-11/RETUPPT1UM0W01
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「短期的には参院選の結果が金融政策に影響することはないだろう」と指摘。日本経済の現状は日銀にとって「現行の政策の下で物価目標の実現に道筋を付ける最後のチャンスに見えていると思われる」とし、「岸田首相自身も早期の金融政策の転換を望んでいる訳ではないとみられる」という。
一方、SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは「選挙結果ということだけでなく、安倍元首相の死去によりアベノミクス堅持という一つの政治アジェンダが大きく後退したことは確か」とみる。政府と日銀の共同声明についても「現在の条項に即したものに修正していく機運はこれから徐々に出てくるのではないか」との見方を示した。
6月会合の前には米国のインフレと長期金利の一段の上昇などを背景に、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)政策の限界論が一部で浮上した。日銀が指し値オペを毎営業日実施して死守している長期金利0.25%の上限を試す動きも見られたが、エコノミストの83%は日銀がYCC政策の枠組みや長期金利の誘導目標を維持することは可能と答えた。
7月会合では9月末に期限を迎える新型コロナ対応金融支援特別オペの終了の是非が議論される可能性がある。再び全国で感染が急拡大する中、予定通り終了するとの見方は32%と、終了しないの43%を下回った。36%は今回会合で延長が決まるとみている。
日銀に政策の調整を促すと予想されるドル・円相場の水準の中央値は1ドル=145円となった。6月調査では140円だった。円安に歯止めをかけるため財務省が為替市場に直接介入する可能性に関しては、「非常に高い」「高い」が計17%と6月調査の7%から増加した。
●展望リポート
会合終了後には新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)が公表される。エコノミストが予想する展望リポートの見通しは、22年度のコアCPIが中央値で2.1%と従来の1.9%から上方修正を見込む。23、24年度は共に1.2%と2%の物価安定目標には届かないとみている。22年度の実質経済成長率は中央値で2.4%と従来の2.9%から下方修正を予想している。
ソシエテ・ジェネラル証券の剱崎仁調査部長は、再値上げの波が広がりつつある中で22年度のコアCPI見通しは2%を超える可能性が高いとしたが、「日銀は足元の物価上昇を一時的とみる姿勢は変えず、大規模金融緩和を続けるとみている」と語った。
□日銀が22年度物価見通し引き上げ検討、成長率は下方修正へ-関係者 – Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-07/REMJK6DWLU6801
2022年7月15日 6:00 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-14/REZPYYT0G1KW01