【天才】ジム・ケラー氏率いるテンストレントがNVIDIAに対抗、鍵は“AIコンピュータ”
テンストレントはAI関連のハードウェアやソフトウェア、オープンソースのプロセッサコアであるRISC-VベースのCPUなどを手掛けるベンチャー企業だ。2016年創業でカナダのトロントに本拠を置き、米国のサンタクララやオースティン、セルビアのベオグラード、インドのベンガルール(バンガロール)を含めた5拠点で開発を進めている。現在の従業員数は約280人で、2023年1月には日本法人も発足している。
テンストレントの名前が広く知られるようになったきっかけは、2020年12月に先端半導体の設計者であるケラー氏の入社だろう。DECの「Alpha 21164/21264」やAMDの「Athlon」「Zen」、アップル(Apple)の「A4/A5」などを開発したケラー氏だが、テンストレントの入社前には「SaphireRapids」のベース技術を開発するなどしたインテル(Intel)を2020年6月に退職している。インテル退職後のキャリアとなったのが、社長兼CTO兼取締役としてのテンストレントへの入社になる。
ケラー氏は「次世代のAI技術の開発に関心を持ってテンストレントに加わった」と入社の背景を説明する。また、現在はCTOではなくCEOを務めているが「AIアクセラレータの市場参入を推進するには、さまざまな機能を備えた開発チームを組成して行く必要がある。創業者のLjubisa Bajic氏と相談した結果、私がCEOに就任してそれらのチーム組成を進めることになった」(ケラー氏)という。
(省略)
テンストレントにおけるRISC-VベースCPUの開発は、BlackholeのようなAIコンピュータ向けから始まったが、単体での引き合いが非常に強いこともあり、IPやチップレットなどの形で提供する方針である。2023年末には第1世代のRISC-VベースCPUのIPをリリースする予定だ。
さらに、同社のRISC-VベースCPUではベクトル演算技術を導入していく構えだ。NECでVE(ベクトルエンジン)の開発に携わった石井康夫氏がテンストレントにアーキテクチャフェローとして入社しており、第2世代のRISC-VベースCPUの開発を進めている。
(省略)
テンストレントのAIアクセラレータは、多くのAIスタートアップが学習もしくは推論のどちらかに特化した技術を展開しているのに対して、学習にも推論にも高い性能を発揮できることを特徴としている。競合として想定するのは、高性能GPU技術を中核にAI開発に必要なツールやライブラリ、ミドルウェアなどを展開するNVIDIAだ。
ケラー氏は「AIのトレンドが大きく高まったタイミングに応えたのがNVIDIAのGPUだ。ただし、GPUはAI処理に最適化されてはいない。当社のAIアクセラレータが効率性で上回ることを証明して行く必要がある。またGPUによるAI処理は、CPUやメモリとのアクセスがボトルネックになることも課題の一つだ。CPUとしてRISC-Vを統合したBlackhole移行の世代ではこれらのボトルネックを解消して、より省電力で低コストのAIコンピュータを実現できる」と説明する。
技術的な優位性の一方で、NVIDIAのGPUを一気に置き換えていくというような性急な将来像を描いているわけではない。AIモデル開発のインフラとして、NVIDIAの「CUDA」はデファクトスタンダードであり、今後もしばらくはCUDAとNVIDIAのGPUが最初の選択肢になることは確かだからだ。「AMD時代に開発した64ビット対応のOpteronは、大手サーバメーカーの採用も勝ち取ったが、一気に競合のインテルを置き換えるところまではいかなかった。しかし現在のサーバアーキテクチャをみれば、Opteronから始まった64ビット対応の技術が100%を占めるようになっている。このように、結果がすぐに出るとは限らないが、当社の優位性を基にしっかりと取り組みを進めていきたい」(ケラー氏)という。
なお、テンストレントのAIモデル開発環境としては、開発済みのAIモデルを最適化する「Buda」と、CUDAのようにAIアクセラレータのハードウェア機能をフル活用してAIモデルを開発するための「BudaM」を用意している。
また、ChatGPTなどに代表される生成AIについても、AIアクセラレータとRISC-VベースCPUで構成されるテンストレントのAIコンピュータを有効活用できるという。(以下ソース)
6/21(水) 6:40配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/4cc8cd3b3a61ea4bdcb5646080e9d791a2018f34