【日銀】植田日銀が多角的レビュー着手、政策金利指針を廃止-YCC維持【金融政策決定会合】
→25年度の消費者物価見通しは1.6%上昇、目標の2%に届かず
日本銀行は28日の金融政策決定会合で、1年から1年半程度の時間をかけて多角的なレビューを行うことを決めた。先行きの政策指針となるフォワードガイダンスを廃止した。長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)政策を軸とした現行の大規模な金融緩和策は維持した。9日に就任した植田和男総裁ら新たな正副総裁が初めて参加した。
発表文では、日本経済が「デフレに陥った1990年代後半以降、25年間という長きにわたって、物価安定の実現が課題となってきた」と指摘。その間に実施されてきたさまざまな金融緩和策が「わが国の経済・物価・金融の幅広い分野と、相互に関連し、影響を及ぼしてきた」ことを踏まえて多角的レビューを実施する。
2016年9月の総括的検証や21年3月の政策点検のような短期的な政策課題への対応とは一線を画している。
米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)は、長期的視点に立った政策検証をここ数年の間に行っている。FRBは19年初めから実施し、長期的に平均2%を目指す平均インフレ率目標の導入などの新たな枠組みを20年8月に公表。ECBは20年1月から着手し、21年7月にインフレ目標を中期で「対称的な」2%と、従来の「中期で2%を下回るがそれに近い水準」から引き上げた。
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植田和男日銀総裁(4月10日)Photographer: Kim Kyung-Hoon/Reuters/Bloomberg
YCC政策の運営では、短期金利にマイナス0.1%を適用し、長期金利(10年物国債金利)はゼロ%程度を誘導水準とする方針を維持した。長期金利の許容変動幅も上下0.5%程度に据え置いた。
日銀は「内外の経済や金融市場を巡る不確実性が極めて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していく」としている。
東京外国為替市場では会合結果の発表後に円売りが優勢となり、ドル・円相場は1ドル=134円台後半に上昇している。
□展望リポート
新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)で初めて示した2025年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年度比上昇率の見通しは1.6%と、目標の2%に届かない姿となった。23年度は1.8%、24年度は2.0%と、前回1月の展望リポートからそれぞれ上方修正された。
□経済・物価情勢の展望(展望レポート) : 日本銀行 Bank of Japan
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/index.htm
全国コアCPIは1月に前年比4.2%上昇と41年4カ月ぶりの高水準となった後、政府のエネルギー価格抑制策の効果で2月と3月は3.1%上昇に鈍化した。ただ、先行指標となる4月の東京都区部コアCPIは3.5%上昇と、食料品を中心に原材料高を価格転嫁する動きが継続し、前月の3.2%上昇から伸びが加速した。
ブルームバーグのエコノミスト調査では、9割弱が今回会合での現状維持を予想していた。ただ、植田総裁がYCCの副作用に言及していたこともあり、市場の一部ではYCCの修正や撤廃も見込まれていた。フォワードガイダンスが変更されるとの見方も出ていた。23年度から25年度のコアCPI上昇率の予想中央値はいずれも1.8%だった。
植田総裁は10日の就任記者会見で、先行きの金融政策運営について「現状の経済・物価・金融情勢を鑑みると、現行のYCCを継続するということが適当」とし、マイナス金利政策も続ける考えを示していた。
>>2 へ続く
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2023年4月28日 13:06 JST 更新日時 2023年4月28日 13:24 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-28/RTRI0SDWLU6C01