就活生の「ガクチカ」で、企業が本当に聞きたいこと
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2024年卒の就活が佳境に入ってきた。就職・採用に関する調査、分析を行うリクルート就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏が、就活の最前線を語る連載の第5回。今回は、コロナ禍でリモート中心の学生生活を送ってきた就活生が、面接の定番質問である「学生時代に一番力を入れたこと(ガクチカ)」で何を伝えればいいのかわからないという問題について、アドバイスする。
●自分の強みがわからない! 24卒に広がる「ガクチカ書けない」問題
就職活動で企業に提出するES(エントリーシート)や面接で問われる定番の質問に、「自己PR」や「志望動機」と並んで「学生時代に一番力を入れたこと(ガクチカ)」があります。今回は「ガクチカ」にまつわる諸問題ついてお話します。
2024年卒の学生は、入学した矢先の20年春からコロナ禍で厳しい行動制限がされており、大きな影響を被った、「フルコロナ世代」とも称されます。学生生活が制限されたため、「『ガクチカ』が書けない」と悩む学生が多いようです。とはいえ、当研究所の2023年卒の採用活動振り返り調査では、8割以上の企業が「ガクチカ」について聞いていると回答しました。従業員規模別でも、大きな企業ほど聞いている割合が大きいことがわかっています。
学生の皆さんにとって、本当に悩ましい問題になっていると思います。新型コロナウイルス感染症の影響で、学校生活はもちろんのこと、学外のアルバイト、留学、部活動、サークル活動なども制約を受けていて、自分が主体的に取り組んだ経験談が少ないように思えてしまうからです。主体的に取り組んだ経験がないわけではないものの、面接で話すのにふさわしい経験がないと思い込んでしまい、困っている学生が多いという事実が、まずひとつあります。
さらに、オンラインでの講義の受講や部活動・サークル活動に制限があったことから、大学生活での縦のつながりや横のつながりが希薄化しており、自分の強みや自分らしさを内省する際に、主体的に取り組んだことや取り組み方の内容を、他者との比較において深堀りすることが難しくなっているという問題もあります。人と直接、対話する機会が少ないため、「自分の強みはこういうことだ」と実感しにくいのです。これは、先述した、面接の定番質問の「自己PR」を考える際にも学生が苦労される点だと思います。
つまり、そもそも主体的な経験が少ないと思っているうえに、他者との比較の中で自分らしさを感じ取れる体験が少なくなってしまっているため、「自分の強み」や「らしさ」をどのように整理して伝えればいいのか、悩む学生が増えているということです。
●内定を複数もらっても 腹落ちできない学生たち
これが、さらにある特徴的な現象につながっています。キャリアカウンセラーの方に話を聞くと、4つも5つも内定を持っているのに、「最終的に企業を決めなくてはいけず、自分らしい選択をしなければと思うが、自分らしい選択の仕方がわからないから教えてほしい」という学生からの相談が増えているというのです。
キャリカウンセラーの方が言うには、内定はもらえても、コロナ禍の制約で主体的に取り組んだと思える経験が少なくなってしまったことと、自分を理解してくれる第三者との対話を通じた自己を深める機会が少なかったために、内定した会社について自分の中で腹落ちし切れず、選べない」とのことです。保護者に「こっちがいいのではないか」と言われてそうかなと思ったり、友達に「それよりこっちじゃないの?」と言われて迷ったりといった具合に、自分の基準で就職の軸を作れていなくて、苦労しているのだそうです。
このような状況の中で、改めて学生の皆さんに知っておいてほしいことがあります。当研究所の調査でも、企業側が「ガクチカ」で学生の皆さんに聞きたいのは、「力を入れたこと」そのものではなく、「どのように工夫して取り組もうと思ったのか」「力を入れたことから何を学び、それを次にどう生かそうとしたのか」といった、経験したことからどう学び、次の経験やステップに生かしているのかといったことに着目している企業の割合が圧倒的に多いのです。
ですから学生の皆さんは、「全国1位になりました」といったような派手できらびやかな経験を語らないといけないと思う必要はありません。自分が取り組みたいと思ったことにどのように主体的に目標設定し、それを達成するためにどのような工夫をしたか、そこで実現したことをどのように次に活かそうとしたかを言語化し、自身の力を発揮しやすい「自分らしいスタイル」について話をすればよいのです。
※以下引用先で