【実業家】孫泰蔵「AIと競争なんてして、どうするの?」
AIは情報革命の核心的な技術の一つだと言われますが、産業革命でエンジンが発明されて世界を根本的に変化させたように、AIの発明も何百年に一度という社会を変えるきっかけになると思います。それくらいの構えでものを考えなくちゃいけない。
リスキリングは「スキル」や「能力」をアップデートしようという考え方ですが、これは能力で人を評価する「メリトクラシー」と呼ばれる中の概念です。ですから、これからは「どんなスキルを身につければいいのか」ではなく、「どんな生き方、働き方をしていけばいいのか」と考えることが重要になってくると思います。
好きなこと以外やっている場合じゃない
その大きな変化は、どのくらい先の未来で現実になりますか?
孫:僕は予言者ではありませんから、いつ必ずこうなるとはっきりは言えないし、ある年に急に切り替わるものでもありません。こういう大きな変化、すなわち「メガトレンド」はいつの時代もグラデーションであり、ある時ふと気がつけば「そういえばすごく様変わりしたなあ」というようなものです。
もちろんいろいろな見方がありますが、AI技術者たちに聞けば50年はかからないよという人が多いでしょう。20年、30年、いや5年で変わると言う人もいるでしょう。でも、来月じゃないからいいやと思っていいかというと、僕はそんなことはないと思うんです。
仮に25年後だとして、自分はもう働かない年齢だといっても、それでいいわけでもないでしょう。自分の子ども、孫など大切な人たちが直面することを考えるなら「じゃあ、いいや」とはならないはず。その変化がメガトレンドとして遅かれ早かれ来るのなら、今から考えておいたほうがいいと思うんです。
具体的にどうなるかは分からなくても、大部分の仕事の多くをAIがやるようになったら、大部分の人間はその仕事で食べていけなくなる。つまり、稼げなくなる。では、どう考えればいいのか。それには、大きな変化の後の世界をイメージしてみるのがいいでしょう。
先ほどの話に戻って結論を言ってしまいますが、もう「どうやって食っていくか」を考えている場合ではなく、「どう生きるべきなのか?」と考えるべきなのですよね。
さらに難しくなりますね。
孫:要するに、「自分の好きなこと以外やってる場合じゃないだろう」ってことです。
「好きなことじゃなくても、仕事ならお金を稼ぐために我慢して続ける」と言う人はいるかもしれません。しかし、「自分の嫌いなことをして生きていく」と言う人はさすがにいないでしょう。もしいるならその理由を聞きたいですが、どこか無理をしているんじゃないかと思います。ですから「どうやって生きていくんですか?」と問われるなら、やっぱり「好きなことをして生きていきたい」と誰もが答えるんじゃないでしょうか。
以下ソース
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00131/00006/