唐揚げブームの終焉 ワタミ『から揚げの天才』の失敗 専門家「興味深い。専門店はタピオカと同じ運命を辿る」
https://news.yahoo.co.jp/articles/94f40048d5cd63f73b60048d8802fba38c541201
“唐揚げブーム”が終焉!?──複数のメディアが、唐揚げ専門店の相次ぐ閉店を報じている。
コロナ禍では人気商品だったはずで、外食チェーンのワタミが「から揚げの天才」を手がけるなど大手資本も参入していた。
一体、何が起きているのかと驚く関係者も少なくない。
まずは、専門店の閉店が相次いでいるという記事のタイトルを3本、ご紹介しよう。
◆閉店ラッシュで店舗半減のワタミ唐揚げ店 跡地に吉野家、コメダ(日経クロストレンド:1月12日)
◆から揚げ店“閉店増加”か 鶏肉仕入れ値高騰も値上げ出来ず…テイクアウト減少も原因か(日テレNEWS:2月14日)
◆卵料理や唐揚げがピンチ! 原材料の高騰うけ消えるメニューも(THE TIME,)(J-CASTテレビウォッチ:2月21日)
それぞれの内容も簡単に紹介しておく。担当記者は「日経クロストレンドは、ワタミが運営する唐揚げ専門店『から揚げの天才』が閉店ラッシュに見舞われているという記事でした」と言う。
「日経クロストレンドの取材では、約120店から約60店に半減してしまったことが明らかになったそうです。その背景として指摘されたのが過当競争です。何しろ『日本唐揚協会』によると、2021年に3123店あった唐揚げ店は、22年に4379店と、たった1年間で40%も増加。12年の450店と比較すれば10年間で10倍になったのです。あまりにも増えてしまって市場が飽和。以前ほどの売上が確保できないことから、『から揚げの天才』の閉店が相次いでいると伝えました」
タピオカと同じ運命
日テレNEWSは、唐揚げ専門店を原材料費の高騰が直撃し、価格転嫁も難しい状況を報じた。
「ブラジル産の輸入鶏肉は、以前より価格が下がったものの高止まりが続いているそうです。国産鶏肉や油、衣に使う粉となると2割増。さらに、電気代の高騰も追い打ちをかけています。ラーメンなら値上げが可能でも、唐揚げは『安くて美味しいB級グルメ』というイメージが強く価格転嫁は難しいと、業界関係者が取材に答えました」(同・記者)
最後に紹介するJ-CASTテレビウォッチの記事は、ニュース番組「THE TIME,」(TBS系列・平日・4:30)の放送内容を紹介したものだ。
「2月17日に放送された『THE TIME,』のニュース関心度ランキングで1位に選ばれたのが、卵や鶏肉の高騰だったそうです。その際、アナウンサーが『人気の唐揚げ店では閉店に追い込まれる店もあるようです』と言及しました」(同・記者)
フードサービスジャーナリストの千葉哲幸氏は「唐揚げも早晩、タピオカと同じ運命を辿ると考えられます」と言う。
「春水堂やGong cha(ゴンチャ)といったブランドが確立しているチェーンは、今でも消費者は支持しています。一方、ブームを当て込んで出店したタピオカ専門店は、どんどん姿を消しています。これと同じことが唐揚げ専門店で起きているのです」
改めて唐揚げを考えてみると、ブームの理由は低価格とテイクアウトとの相性にあった。
今、消費者が求めているものとは正反対だと言っていい。
「興味深いのは、外食産業では大手のワタミが手がけた、『から揚げの天才』の失敗です。ワタミはコロナ禍の直撃を受け、売上減に悩まされていました。さらに渡邉美樹氏(63)が2019年に参議院議員の任期満了を迎え、経営に復帰することも既定路線でした。どうしても“成果”が必要だったのでしょう。ブームが起きると、急いで唐揚げ専門チェーンの経営に乗り出しました」(同・千葉氏)
商品開発に立ち遅れか
一時期、「から揚げの天才」が成功を収めたことは事実だ。ワタミは「飲食企業最速の2年7カ月で100店舗を達成」と盛んに宣伝していた。
「しかしブームの終焉が近づくと、消費者をつなぎ止めておくことができなくなりました。基本的に小さな唐揚げ専門店が閉店に追い込まれている中、大手のワタミが後退したのは珍しいとも言えます。ワタミが安易に時流に乗ってしまい、『から揚げの天才』でしか食べられない、独自性が高い唐揚げの商品開発に遅れていたことが原因の一つとして挙げられるでしょう」(同・千葉氏)