財源に恵まれた東京23区で少子化対策サービス合戦 区外との格差、ばらまき批判も
東京23区と多摩地域の財政 財政の弾力性を示す指標「経常収支比率」は、多摩地域が23区よりも10ポイント程度高く、財政的に余裕がないことを示す。2021年度普通会計決算で23区平均は78.6%、多摩地域・島しょ平均は87.6%。過去5年は、ほぼ同様の傾向。数値が高いほど人件費や扶助費など使い道が決まっている義務的な経費が多く、自由な政策展開がしにくいとされる。
東京都は、23年度から保護者の所得制限なしで、18歳以下の子ども全員に月額5000円を支給する方針だ。
小池百合子知事は、少子化は「社会の存立基盤を揺るがす事態」との考えを示す。「それだけの財源があるのは大変うらやましい」(愛知県の大村秀章知事)と地方から声が上がるが、23区はさらに独自の支援策を上乗せする。
江東区は18歳以下の約8万2500人に、1人3万円の電子クーポンを配る。新宿区は「入学準備のサポート」(吉住健一区長)として小中学校に入学する児童生徒全員に小1は5万円、中1は10万円を配る。
目黒区も18歳以下に1万円、新生児には2万円の祝い金を出す。文京区は当初予算案には盛り込まなかったが、高校生世代などへ月に5000円を給付することを予定している。千代田区は、22年度補正予算で18歳以下に5万円の配布を決めた。
多摩地域ではこうした取り組みは少ない。「なんでも所得制限なし、無償化というのは現実的じゃない」と東久留米市の富田竜馬市長はこぼす。「市としては(教育環境の充実など)子ども自身につながる支援に力をいれたい」とする。
別の首長は「少子化対策は国や都など広域的に取り組むべきだし、経済支援なら所得制限をつけないとおかしい」と指摘し、こうぼやいた。「あっちは何千円、こっちは何万円というのでは、ただのばらまき。統一地方選に向けたアピールだろう」
◆返済不要の奨学金や給食費無償化も
少子化対策を巡るサービス合戦が、東京23区を中心に過熱する。首長からは国の支援拡充を求める声が上がる。
足立区は大学生や大学進学予定者に返済不要の給付型奨学金制度を設ける。私立大医学部進学の場合、6年間で給付額は最大3600万円。募集人数は40人で年収800万円以下の所得制限や、成績要件がある。
中野区は、離婚調停中で児童扶養手当の申請ができない「実質ひとり親家庭」に、手当相当額の児童1人あたり10万円の支給を予定。妊娠、出産支援にも多くの自治体が取り組む。港区は出産費用の自己負担を事実上ゼロにすることを目指し、助成の上限額を81万円に引き上げた。
給食費の無償化も広がる。23区では、昨年9月に方針を公表した葛飾区のほか、中央、台東、品川、世田谷、北、荒川の6区が小中学校の保護者負担をゼロにするための費用を新年度予算案に盛り込んだ。
足立区は中学校の無償化を優先し、小学校は「財源の裏付けを含めて慎重な判断が必要。早期実施に向けて検討する」とした。都外では、水戸市が中学校の無償化方針を表明している。
江戸川区は実施を見送った。斉藤猛区長は会見で「単年度ならばできるかもしれないが、5年、10年と(費用が)かかってくることも考えないといけない。学校給食は義務教育の一環ではないか。無償化をやるなら国がやるべきだ」と主張した。国立市の永見理夫市長も「国や都が広域的に取り組んでほしい」と注文した。
東京新聞 2023年2月28日 06時00分
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