【IT】せっかく中途採用した技術者を「社内業者」扱い、日本企業のDXの愚かな現実
最近、この「システム内製部隊を社内業者扱いする」という問題を耳にする機会が増えた。社内業者扱いとは要するに、事業部門が内製部隊をSIerなど人月商売のITベンダーと同様に、ご用を聞いてもらえる便利な存在と勘違いしてしまう現象だ。その結果、SIerなどの技術者に対するかのように、内製部隊の技術者に上から目線で「君たちプロなんだから、1カ月でつくってよ」などと依頼する愚か者までが出てくる始末だ。
実は白状すると、私は当初、この問題をそれほど深刻には捉えていなかった。社内業者といった言葉を使ったり、上から目線の愚か者の話を書いたりすると大きな問題「ぽく」なるが、例えば社内業者を「社内のITベンダー」と言い換えるとどうだろうか。たちまち問題だと感じなくなるよね。しかもつい最近まで、社内のITベンダーをつくる、というか「社内にITベンダーを取り戻す」ことがDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえで重要だと、私も認識していたのだ。
言っておくが、これは新設の内製部隊のことではない。何の話かと言うと、システム子会社を自社に吸収する試みである。かつて多くの企業がリストラの一環として、IT部門で実際に手を動かしている技術者をまとめてシステム子会社として切り出した。で、一部のシステム子会社は親会社以外のシステム開発なども請け負うようになり、SIerに「進化」していった。これが人月商売のIT業界が異常に発達した要因の1つだが、逆にシステム子会社を切り出した企業は、プログラムを書ける技術者が本社からいなくなってしまった。
そして今、企業がDXに取り組むうえで、システム子会社の在り方が問われるようになった。特にスピード感が問題だった。せっかく手を動かせる技術者を抱えているにもかかわらず、別会社である以上、商談のプロセスが必要になる。以前、ある物流業のCIO(最高情報責任者)が「見積もりなどのやり取りで、貴重な時間を浪費してしまう」と嘆くのを聞いたことがある。そんなこともあり、システム子会社を本社に戻す企業が複数出てきたわけだ。
これは社内のITベンダーの復活といえる。ならば、技術者を中途採用して新たなシステム内製部隊をつくるのは、社内のITベンダーの誕生といってもよい。そんな訳で、こうした取り組みの中に由々しき問題が潜むことに私は気づかずにいたのだ。誠に抜かっていたというしかない。で、「業者扱い」という強い言葉を聞いて、はたと気がついた。これ、確かにまずいよね。DXは絶対にうまくいかないだろうし、中途採用した技術者にも見限られるに違いない。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00148/012500267/